朝、職場に向かう電車の中で、もう疲れている。誰に何をされたわけでもないのに、今日も一日、気を張っていなければいけないと分かっている。
生きづらい、という言葉があります。はっきりした原因が見あたらないぶん、自分の性格の問題なのだろうと片づけてしまいがちな感覚です。全国の30〜60代の女性300人に、それがどんな場面で起きているのかをうかがいました。結果を見ていくと、性格というより、人との間の線の引き方に関わることが浮かんできました。
この記事について
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この記事は、調査をもとに、
スタッフがまとめたものです。
実際に寄せられたお声ではありません。
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生きづらさは、人といる場所で起きている
生きづらさを感じることが最も多い場面をうかがいました。
Q. 生きづらさを感じることが最も多いのは、どの場面ですか。(n=300/単一回答)
「職場・仕事の場面」が58.0%で突出しました。友人やママ友16.3%、家庭15.7%と続きます。一方で「一人でいるとき」は10.0%です。
つまり、生きづらさの大半は、誰かと一緒にいる場所で起きているということになります。一人になると和らぐのであれば、それはその人の中に固定された性質というより、人との間で生まれている出来事だと考えたほうが自然です。
何が起きているのか。具体的に聞いてみた
次に、日ごろ当てはまることをうかがいました(複数回答)。ここがこの調査でいちばん、輪郭のはっきりした部分でした。
Q. 次のうち、ご自身に当てはまるものをすべてお選びください。(n=300/複数回答)
1位は「相手の機嫌が気になって疲れてしまう」66.3%。3人に2人です。次いで「頼まれごとを断れない」41.0%、「自分の意見を言うのが怖い」40.7%。
この三つは、別々のことのようでいて、同じ一つのことを違う角度から言っているように見えます。相手の機嫌が自分の領域に入ってきてしまう。だから断れないし、意見も言えない。相手の状態と自分の状態が、地続きになってしまっているのです。
「人の相談を聞くと、自分まで落ち込む」13.0%も、同じ線の上にあります。聞き役を頼まれやすい方ほど、相手の話を自分の中に置いたまま持ち帰ってしまう。聞く力があることと、聞いたものを抱え込んでしまうことは、たいてい同じところから来ています。
そしてもう一つ、見過ごせない数字があります。「何が自分の本当の気持ちか分からなくなる」21.0%。5人に1人です。相手に合わせ続けていると、合わせているという自覚さえ薄れて、自分がどうしたいのかが分からなくなることがあります。
これは、性格ではなく境界線の話かもしれません
こうした状態は、しばしば「気にしすぎ」「優しすぎる」と説明されます。本人も、そう思っていることが多い。けれど、性格という言葉で片づけてしまうと、変えようのないものとして自分を責めることになります。
WORTEでは、これを適切な距離感(バウンダリー)の問題として捉えています。自分と相手の間にある線が、どこにあるのか。その線がはっきりしないと、相手の機嫌がそのまま流れ込んできてしまいます。
線を引くというと、冷たいこと、人を突き放すことのように聞こえるかもしれません。けれど実際は逆だと思います。線があるからこそ、相手の話を安心して聞けます。線がないまま聞き続けると、相手の重さをそのまま受け取ってしまい、やがて人と関わること自体がしんどくなる。
和らげようとして、何をしてきたか
生きづらさを和らげるために試したことをうかがいました(複数回答)。
Q. 生きづらさを和らげるために試したことをすべてお選びください。(n=300/複数回答)
最も多いのは「本やSNSで情報を集めた」41.5%。そして「特に何もしていない」が29.0%あります。
興味深いのは「人と距離を置いた」が3.7%と、ごくわずかだったことです。相手の機嫌に疲れている方が66.3%いるのに、実際に距離を取った方はほとんどいません。距離を取ること自体が、この方たちにとっては難しいのだと思います。それができるなら、そもそも断れないということも起きていないはずです。
線は、ことばで引かれている
ここからは、調査結果に対するWORTEからの見方です。
境界線は、頭の中の理屈で引かれるものではありません。実際には、その場で口に出すことば、その言い方、声の出し方で引かれています。「今日はできません」と言えるかどうか。言えたとして、その声が相手に届く響きをしているかどうか。
本を読んでバウンダリーの考え方を知っても、その場で声が出なければ、線は引かれないままです。情報を集めた方が41.5%いて、それでもなお生きづらさが続いているのは、そのあたりに理由があるのかもしれません。
だからWORTEでは、ことばを声に出して扱います。自分の声で、自分の言い分を最後まで言ってみる。頭で分かることと、体を通して言えることの間には、思っているより距離があります。その距離を埋める作業は、知識を増やすこととは別のものです。
今回の調査で、生きづらさを感じる場面の58.0%が職場でした。そして一人でいるときは10.0%です。この差は、裏を返せば希望のある数字だと思います。あなたという人間が変わらなければならない、という話ではない。人との間で起きていることなら、その間に何を置くかで、変わる余地があります。
いますぐ職場で線を引く必要はありません。まずは、自分がほんとうは何を言いたかったのかを、誰もいないところで声に出してみる。そこからで十分だと思います。
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