言語造形人間学 DとTの子音 その1
今日は爽やかで、朝は仕事前に少し散歩しました。
みなさんはどんな週末のご予定ですか?
前回、Dの子音のレッスンをさまざまな例とともにご紹介いたしました。
今日はTとDの二つの子音をご紹介します。
今日ご紹介するWORTEオリジナルの言語造形練習文は
「だだだ/たたたの一音一歩」です。
図の左側のように「だ」とか「た」の一音につき、
一歩ずつゆっくり体重移動していきます。
体重の移動が終わったら「だ」あるいは「た」と発音します。
「だ」も「た」も舌の先端を使いますが、
「た」は「だ」よりもさらに先を使います。
このレッスンでは、体重移動が二つの音で違います。
「た」と「だ」の音が分かれるゾーンがあります。足の図をご覧ください。
「だ」
このゾーンに体重が乗ってきたら、ぐっとそのまま上からぐっと
足の上に乗って「だ」と言います。
「だ」が出来るようになると、ゾーンが意識できているのがわかります。
このゾーンを意識できるようになると、外から見ていてもわかります。
「た」
「だ」が出来るようになるには、人によって違いますが、
数回試みてその場で出来る方もいますし、お家で稽古して次には出来る方もいます。
中にはそのままの自分をなかなか認められず、一年ほどかかる方もいます。
前回お話したように、ほかの人との比較やコンプレックスを持ち続けている方は、
このゾーンに来ると体重をすっと脇へずらしたり、
頭の位置を変えたりなさって、まっすぐでいることが難しいです。
すると「だ」の音にもそれがそのまま現れます。
音がゆがんだり、「だ」はDAですから、「A(あ)」の母音がゆがんだりします。
突然声が小さくなったり、突然地声が混ざったり、
発声が安定しないという形で現れることもあります。
個人レッスンでは、いろいろなワークをして、このこととじっくり取り組んでいきます。
「た」は他者にそっと触れる音
「だ」は自分との関係を現すと、前回お話しました。
「た」はおもしろいことに他者との関係を現します。
他者は自分の先にいる。
そしてここまで体重を前に移動すると、「た」と言ったときの声が、
全く違う空間から出ているかのような、美しい、優しい音色になります。
この音を抒情詩の声とWORTEでは呼んでいます。
とても優しいのに、とてもリアルな声です。
「た」は自分の前にいる他者(世界)にそっと触れることで、
他者(世界)との関係を現していると言えます。
ほかの人に触れるのに、そっと触れることができる。
それは自分との関係が安定しているからこそ、出来ることです。
また、きちんと他者に触れることができる。
それはしっかりと前にまで意識が出てくることができる。他の人を自分の延長と捉えてはいない。
(当たり前のことですが、それができている関係は実は少ないのではないでしょうか?)
その表れと言えます。
体重を前に移動するのが、「え、こんなに前ですか?」という方がいます。
前という空間があまり普段からなくて、もともと前に出ない方に多いです。
前という空間をまるで彼方のように遠く捉えているため、
ものすごく肉体を移動して前によろめいてしまうのです。
よろめいてしまい、「た」の発音にいたらないのです。
あくまでもゾーンから前に移動していく、その移動を意識することです、
とレッスンしていくことで、前という空間に馴染んでいくことが出来ます。
このような方は、他の人が自分ではないことをよくわかっているとも言えます。
また前という空間に馴染んでくると、表現力がぐんぐんついていきます。
口を開かない方
体重の移動は出来るけれど、口をあまり開かない方がいます。
「だ」(DA)のA(あ)の部分でしっかり音が出ないで、音が前に行かない方もいます。
口を開くといっても、大口を開けるわけではありません。
けれども「あ」の母音がきちんと出る程度には開かなければなりません。
みなさんも普段、周りの方が話しているのを聞いていて、
口を開くのが苦手な方、好きではない方がいるのに気づくことがあると思います。
いろいろな理由があります。もともと顎が小さい方もいますが、そうでない場合もあります。
たとえば本心を隠す場合、何か言えないことがある場合、
何か隠している場合、何か画策をたてている時、
人はなかなか口を開かないのをご覧になったことがあると思います。
「口が重い」「口を開かない」という言い回しもあります。
触れることは、触れられること
他者に触れようと思ったら、自分もまた触れられるのだという事実を受け入れないとなりません。
ほかの人に触れるのに、自分のことは隠しておきたいということは出来ないのですね。
これもまた「た」と言ったときの音に現れて聞こえます。
前の空間でのみ出る音色に、声が変わらないのです。
身につく
仕事で本心を隠さなければならないと仰る方もいらっしゃるのかもしれません。
けれどもそれは声に、発音に現れています。
また声、舌や体重移動という習慣になって、
それらはご自身の身に返ってきます。身についていきます。
長年の癖になると、ご家族やパートナーなど、
そばにいる方が寂しい思いをするかもしれません。
あるいはご本人が人と触れ合っている気がしない。
そんな孤独を抱えて生きることになるかもしれません。
そういったことも個人レッスンの中では、お話していきます。
息を戻す方
あるいは吐く息の上に言葉は乗るのですが、
(息を吸いながら話すと吃音の症状になります)
吐いた瞬間、息を前に出さず、意識を後ろに引っ込めてしまう方もいます。
すると声は意識の軌跡ですので、体重はきちんと前、肉体の前にあるのですが、
声の音色が地声のままだったり、声が後ろへ行ったりします。
これはこうなっていますよ、と真似をするのが少し複雑なのですが、
前(他者)という空間に行くことを躊躇している現れです。
このような方の場合は、個人レッスンで前という空間に少しずつ慣れていくことで、
前にもいろいろあるということをレッスンしていきます。
ふだんの発音から
ふだん「だ」の音がきれいな人を拝聴すると、安心をおすそ分けしていただくようです。
みなさんも「だいじょうぶだよ」と悩んでいるときに声をかけてもらって、
すっと気が楽になったことはありませんか?
「だいじょうぶ」の「だ」の音に、その人がしっかりと受け止めてくれたことがわかるのです。
自分を受け止められる人に、「だいじょうぶ」と言ってもらえると安心するのでしょう。
逆に「だ」の音が上記のような方の場合は
ご自身との関係が安定していない場合があります。
もちろん請け負ったときには真実そういうお気持ちなのだと思いますが、
どのくらい重みがあるのか?という点で少し不安が残るように聞こえてきます。
そのような方が何かを請け負ったりしてくれた場合は、
様子を見るという選択肢をとっておかれるのも一案です。
ご覧になっていただいように、「だだだ/たたたの一音一歩」のレッスンで、
自分との関係を見直したり、周囲の方との関係を見直していくことが出来ます。
朗読の表現が変わる
お話や朗読では、このレッスンと他の「だ」「た」のレッスンをしていくことで、
重さの調整が可能になります。
「ドンドンドン、と戸を叩く音がしました」
ドンドンドン!この音をしっかりと発音できると、臨場感が違います。
「トントントン、小さなノックの音が聞こえました」
そっとノックする音で朗読できると、
ノックしている人がどんな人なのか、あるいは状況を伝えることができます。
同じようなものでも、「戸(とTo)」と「ドア(Doa)」では、
TなのかDなのか、で重さが違います。
軽いのが得意な方、重いほうが上手な方がいらっしゃいます。
両方できると、表現の幅がぐんと広がります。
シュタイナーは簡潔に
「Tは軽いものに触れる音、Dは重いものに触れる音」と言っています。
そこからレッスンを作ってきました。
この二つの子音を稽古することで、
自分の体を重く感じるのか、軽く感じるのかを調整が可能になります。
重心が決まると、声がすわる
声が高すぎる人の話をしました。
重心が高すぎる、あるいは吐く息よりも吸う息のほうが強い場合、
声が高くなる傾向があります。
また自分の重心をつかみ切れず、動けないでだらっとしている場合、
発音がゆるくて、音がきちんと形づくれず、音がききとりにくい場合があります。
「だだだ/たたたの一音一歩」のレッスンをしていくと、
先ほどざっくりと「た」と「だ」の音が分かれるゾーンと言っていましたが、
もっとはっきりしてきて、点くらい正確になってきます。
ここまで来ると、その方の声もその方の身体にふさわしい高さ、あるは低さになっています。
次回は舌についてお話しします。よい週末をお過ごしください!
9月にはこれらの練習文で、参加者の方のマップを書くワークショップをいたします。
読んだだけでも伝わるよう心がけて書いていますが、
言語造形は体験こそすべてです。よろしかったら、どうぞご参加ください。
言語造形人間学について
言語造形人間学は小野恵美のオリジナルの造語です。シュ タイナー夫妻の始めたことばの芸術、言語造形を20年間実践し、ことばの音(子音、母音)と身体や動き、意識との関係、人間の成長との関係などを研究して きました。お話を教えるこ と、オリジナルの言語造形練習文を個人レッスンで各自に適応することで、その確実さを確認してきました。言語造形人間学は、シュタイナーの言語造形の精神 が結実したものです。ヴォルテのレッスンは、言語造形人間学に基づいて行われます。またヴォルテの上級クラスでは、集中講義としてその理論の講義を受ける ことができます。
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